コストカットの盲点──社内ルールの「違和感」に気づける人の思考力

コストカットの盲点──社内ルールの「違和感」に気づける人の思考力:記事のアイキャッチ画像 効率好きの特性

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コストカットの本質は、現場の小さな効率化ではなく、組織のルールや構造そのものに目を向けることにあります。そして、社内ルールに「おかしい」と感じる違和感は、その本質を見抜く力を持っている証拠です。

僕がIT営業をしていたとき、ある証券会社のシステム部門に出入りしていました。

そこで目の当たりにしたのは、200万円で済むはずの話が700万円に膨れ上がり、さらに毎年100万円のコストが永遠に発生し続けるという、信じがたい意思決定のプロセスでした。

関わっている人たちは全員、真面目で優秀な人ばかり。誰一人サボっていない。むしろ全力で仕事をしている。

なのに、結果として会社の金が無駄に消えていく。

この話を聞いて「それ、おかしくない?」と思った人。その感覚は、実はとんでもなく重要な才能のサインです。

今日はその話を書きます。

200万円が700万円に──コストカットを阻むルールの正体

コスト膨張のロジック:200万円が700万円に膨らむ構造

発端はシンプルでした。

社内で使っているファイルサーバーの保証期限が切れる。だから来年度の予算で新しい機器に入れ替えたい。見積もりは200万円。機器代と設定作業を含めて、妥当な金額です。

ところが、この200万円の申請がそのまま通らない可能性がある、という話になりました。

理由は社内ルール。「付加価値のある提案でなければ予算は承認しない」というルールが存在していたからです。

つまり、「古い機器を新しくします」だけでは弱い。「この投資によって社内にどんな新しい価値が生まれるのか」を示さないといけない。

その結果、何が起きたか。

ファイルサーバーの入れ替えに加えて、誰も必要としていない「社内情報活用システム」を500万円で抱き合わせるという提案が生まれました。

合計700万円。さらにそのシステムの保守費用が、毎年100万円。導入した後も、ずっとコストが発生し続ける。

整理するとこうなります。

  • 本当に必要なのはファイルサーバーの入れ替え(200万円)
  • でも「付加価値」がないと予算が通らない
  • だから誰も使う予定のない500万円のシステムをセットにする
  • 結果、合計700万円+毎年100万円の保守コスト

社内情報活用システムを「使いたい」と言っている部門は、どこにもありませんでした。経理も、システム部門自身も、正直なところ使う予定はない。

「社内への貢献」という大義名分が、本来200万円で済む話を3倍以上に膨らませた。

担当の先輩は、この提案書を通すために数十時間を費やしていました。誰も使わないシステムの導入効果を調べ、社内への貢献を言語化し、役員を納得させる資料を作る。

先輩を責める気には全然なれませんでした。この構造の中で、できる限りの工夫をした結果がこれだったんです。

でも、この話を聞いたとき、僕の中に強烈な違和感が残りました。

コストカットの本質を見抜く「違和感」の正体

目的志向:ルールの表面ではなく本来の目的を見る視座

ここで一つ、考えてみてほしいことがあります。

このエピソードを読んで「おかしい」と感じたなら、それは単なる感想ではありません。

多くの人は、こういう話を聞いても「まあ、会社ってそういうものだよね」で終わります。実際、この証券会社でも、関わった全員がこの提案を「普通のこと」として進めていました。おかしいと声を上げる人はいなかった。

つまり、「おかしい」と感じること自体が、当たり前ではないんです。

では、その違和感はどこから来ているのか。

それは、ルールの表面ではなく「目的」を見ているからです。

「付加価値のある提案にしろ」というルールの表面だけ見れば、先輩の対応は正しい。ルールに従って、付加価値を付けた。形式的には何も間違っていません。

でも、このルールが本来何のために作られたのかを考えると、話は変わります。

このルールの本来の目的は、「限られた予算を有効に使うこと」のはず。つまりコストカットの思想から生まれたルールです。

なのに、そのルール自体が200万円を700万円に膨らませている。目的と手段が完全に逆転している

ここに気づける人は、ルールに「従う」だけではなく、ルールが「なぜ存在するのか」「本来の目的は何か」という背景に目を向けています。

これは目的志向という、極めて高い視座を持っている証拠です。

多くの人はルールの中で最適解を探します。でも、ルールそのものが目的に反していないかを検証できる人は、組織の中でもごく一握りしかいない。

そして厄介なことに、この力を持っている本人は、自分のこの視点がどれほど希少なのか、まったく気づいていないことが多い。「普通に考えたらおかしいでしょ」と思っているだけで、それが「才能」だとは認識していません。

本当のコストカットは手元にはない

構造的インパクト:現場の努力を上回る意思決定の影響力

ここからが、この話の核心です。

現場レベルでのコストカットというと、何を思い浮かべるでしょうか。

残業時間を減らす。会議の時間を短縮する。Excelの作業を自動化して、1人あたり月に数時間を削減する。

これらは確かに大事な取り組みです。でも、規模で言えば、1人あたり月に数千円〜数万円分の効率化にしかならない。

一方で、さっきのファイルサーバーの話はどうか。

たった一回の意思決定で、500万円の無駄が生まれている。毎年100万円の保守コストが追加されている。現場で何十人もの社員が毎月コツコツ効率化した成果が、上層部の一回の判断で吹き飛ぶ規模です。

本当のコストカットとは、手元の小さな積み重ねではなく、もっと大きな構造的な部分から優先順位をつけて削っていく思考のことです。

現場の効率化が無意味だと言いたいのではありません。ただ、インパクトの大きさで優先順位をつけるという発想がなければ、いくら手元で頑張っても全体のコストは下がらない。

そして、このエピソードに違和感を覚えた人は、すでにその思考を持っています。

「200万円で済む話を700万円にするのはおかしい」と感じた瞬間、その人の頭の中では、無意識のうちに影響度の大きい部分を特定し、そこから削るべきだという優先順位の計算が走っている。

これは「Excelが得意」とか「作業が早い」という次元の話ではありません。

組織全体を俯瞰して、最もインパクトの大きいポイントを特定する力。それが、効率化好きの人が無自覚に持っている、本当の武器です。

次の記事では、この「目的から逆算してルールそのものを変える力」が、会社にとって具体的にどれほどの金額的価値を持つのかを掘り下げます。

コストカットは現場の工夫では終わらない──ルールを変える人の数千万円の価値