コストカットは現場の工夫では終わらない──ルールを変える人の数千万円の価値

効率好きの真価

▶︎仕事の効率化を考えた結果、仕事をやめた人
▶︎効率化・仕組み化・本質が好き
▶︎会社では大きな成果も昇給もない
▶︎副業もうまくいかず15年右往左往する
▶︎その経験から僕と同じような素質・考えを持っている人に
▶︎自分の特性を活かして生きる方法を伝えたい!!

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前回の記事で、200万円のファイルサーバー入れ替えが700万円に膨れ上がった話を書きました。

コストカットの盲点──社内ルールの「違和感」に気づける人の思考力

コストカットの効果は、現場の作業改善ではなく、ルールや仕組みそのものを変えることで数千万円規模に跳ね上がります。そして、その力は効率化好きの人が無自覚に備えているものです。

あの話の核心は、「付加価値がないと予算が通らない」という社内ルールが、本来の目的(コスト削減)と真逆の結果を生んでいたことでした。

そして、そこに違和感を覚えた人は、ルールの目的を見抜く目的志向という高い視座を持っている、という話をしました。

今回はもう一歩踏み込みます。

その「目的志向」が、具体的にどれほどの金額的価値を持つのか。そして、効率化好きの人が無自覚に備えているもう一つの力について書きます。

ルールに従う優秀な人たちと「負の最適化」

「負の最適化」のサイクル:優秀な人がルールに従うほど無駄が増える構造

最初に確認しておきたいことがあります。

あのファイルサーバーの件で、先輩がやったことは「間違い」ではなかった、ということです。

「付加価値のある提案にしろ」というルールがある以上、そのルールの中で最善を尽くすのは、組織人としてまっとうな行動です。先輩はむしろ優秀だったからこそ、誰も必要としていないシステムの導入効果を論理的にまとめ上げ、役員を説得できる資料を作り上げることができた。

ここが厄介なところです。

優秀な人ほど、与えられたルールの中で高い成果を出してしまう

ルールが「付加価値を示せ」と言っているなら、付加価値を示す。求められたフォーマットで、求められた論理を、求められた精度で組み立てる。それが「仕事ができる」ということだと、ほとんどの組織では定義されています。

でも、その結果として何が起きたか。

200万円が700万円になった。毎年100万円の保守コストが追加された。先輩は数十時間を資料作成に費やした。そして誰もそのシステムを使わない。

これが「負の最適化」です。

ルールに従えば従うほど、組織全体で見ると無駄なコストが積み上がっていく。個人レベルでは「正しいこと」をしているのに、全体では「間違った方向」に進んでいる。

そしてこの構造は、このファイルサーバーの件だけの話ではありません。

「予算消化」という名のコスト増大

年度末に「予算を使い切らないと、来年度の予算が減らされる」という理由で、必要のない備品を購入したり、急いで外注に出したりする話は、多くの組織で当たり前のように起きています。僕が以前いた会社でも、3月になると「何か使える外注先ない?」という声が飛び交っていました。

「前例踏襲」という思考停止

「去年もこうだったから」という理由で、効果が検証されていない施策がそのまま継続される。僕も過去に「この運用、本当に意味あるんですか?」と聞いたことがありますが、返ってきたのは「そういうものだから」の一言だけでした。疑問を挟む余地がない空気が、静かにコストを固定化していく。

「承認プロセス」という時間コスト

本来は30分で決裁できる内容に、3回の会議と5人の承認印が必要になる。その会議の準備に費やされる時間と人件費は、誰も計算していない。さっきのファイルサーバーの件でも、先輩が資料作成に費やした数十時間は、時給換算すればそれだけで数十万円のコストです。

これらはすべて、ルールの中で真面目に仕事をした結果として起きていること。個人の能力や意欲の問題ではなく、ルールそのものが生み出している構造的な無駄です。

コストカットの優先順位を見極める力

改善インパクトの比較:現場の作業効率化 vs ルールの再設計

ここで、効率化好きの人が持っている「もう一つの力」の話をします。

前回の記事では「目的志向」──ルールの背景にある本来の目的を見抜く力──について書きました。

でも実は、もう一段階深い才能があります。

それは、「目的に合わせて、ルールそのものを改善・再設計する力」です。

多くの人は、ルールの中で最適化します。効率化好きの人は、ルールそのものを最適化の対象として見る

「付加価値のある提案にしろ」というルールがコストを膨張させているなら、そのルール自体を変えるべきだ。たとえば「一定金額以下の更新案件は簡易承認で通す」という新しいルールを作れば、200万円は200万円のまま通る。

この発想は、「How(どうやるか)」ではなく「What(何をやるか)」のレイヤーで物事を捉えています。

そしてもう一つ。この力には必ず「影響度による優先順位づけ」が伴います。

効率化好きの人の頭の中では、無意識のうちにこういう計算が走っています。

  • 現場の作業効率化 → 1人あたり月数千円〜数万円の改善
  • 承認プロセスの簡略化 → 年間数十万円の時間コスト削減
  • 予算承認ルールの見直し → 1案件あたり数百万円単位の無駄の排除

どこに手をつければ最大のコストカットができるか。この問いに対する答えを、効率化好きの人は直感的に持っています。

手元の小さな改善に全力を注ぐのではなく、インパクトの大きい構造的な部分から手をつける。これが、効率化好きの人が無自覚に行っている思考の本質です。

数千万円のコストカットを生む思考の価値

数千万円のコストカット:1つのルール改善が全社に波及する様子

ここで、具体的な数字の話をします。

あのファイルサーバーの件。500万円の不要なシステム導入+毎年100万円の保守コスト。5年間で合計1000万円の無駄です。

でも、これはたった1つの部門の、たった1件の予算申請の話にすぎません。

同じルールが全社に適用されているとしたら、各部門で似たような「付加価値の水増し」が起きている可能性がある。システム部門だけでなく、営業部門、総務部門、人事部門、すべての部門が同じルールの下で予算申請をしている。

仮に年間10件、同じような構造の予算申請があったとしたら。

500万円 × 10件 = 年間5000万円の構造的な無駄

保守コストまで含めれば、数年で億単位にもなり得ます。

「付加価値のある提案にしろ」というルール1つを改善するだけで、数千万円規模のコストカットが実現する

これが、「ルールの目的を見抜き、ルールそのものを再設計する力」の具体的な価値です。

目的から逆算し、ルールを疑って最適化する視点。それは、そのまま会社にとって数千万円規模のコストカットに直結しています。

現場で作業を1時間短縮するのとは、まったくスケールが違う。

効率化好きの「真価」とは

ここまで読んで気づいたかもしれません。

効率化好きの人が持っている力は、「作業を早くこなす力」ではない。

「目的に合わせてルールそのものを改善し、影響度の高い部分から優先的に手をつける力」

これこそが、効率化好きの真価です。

現場の一担当者として「作業効率化の達人」と呼ばれることに、どこか違和感を感じたことはないでしょうか。その違和感は正しい。本来のスケールで評価されていないだけなんです。

コンサルティング会社が「業務プロセス改善」という名目で数百万円のフィーを取っている仕事。その本質と同じことを、効率化好きの人は日常業務の中で、しかも無意識に行っている。

違いは、それが正当に評価される場所にいるかどうか、だけです。

自分の力を正しく認識する

効率化好きの真価:作業の達人から仕組みの設計者へ

ここまでの話を整理します。

効率化好きの人が持っている力は、2つあります。

  1. 目的志向: ルールの表面ではなく、「なぜそのルールがあるのか」という目的を見抜く力
  2. 影響度による優先順位づけ: 手元の小さな改善ではなく、組織全体でインパクトの大きい部分を特定し、そこから手をつける力

この2つを組み合わせると、ルールそのものを目的に沿って再設計し、最大のコスト削減を実現するという、組織にとって極めて価値の高いアウトプットが生まれます。

その価値は、1案件500万円 × 複数部門で、すぐに数千万円の規模になる。

これが、効率化好きの真価です。「Excelが得意な人」でも「作業が早い人」でもない。組織の構造的な無駄を特定し、根本から排除できる人

次の記事では、この力が「どのポジション」で最も活きるのかについて書きます。現場の一担当者のままでは、この力は永遠に正当評価されません。

「仕組みを疑う才能」が最も輝く、戦略的ポジションの選び方