業務改善提案書「対象の範囲」の書き方【記載項目と実例】

業務改善提案書

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業務改善提案書のテンプレートをダウンロードしたとき、「対象の範囲」という欄を見て手が止まった経験がある。

「部門名を書けばいいのか」「役割まで書くのか」「業務フローも必要なのか」——何を、どこまで書けばいいかが、どのテンプレートにも書いていないからだ。

実際、テンプレートに記載されているのは「対象業務・対象部署」という欄名だけで、それ以上の説明はない。迷うのは当然である。

僕がコンサルとして工場設備の開発・メンテナンス企業を支援したとき、「対象の範囲」に部門名だけが書かれた提案書を見たことがある。

部門長によるレビューで、「開発部門はどうするのか」「営業のエスカレーション対応はどうするのか」という指摘が次々と出てきた。「これは今回の対象か」「あれは含めるのか」という議論が終わらず、提案書の本題にたどり着けなかった。

あの場にいた担当者の表情は、今でも覚えている。

「対象の範囲」には、書くべき4つの要素がある。それを知っていれば、あの議論は起きなかった。

業務改善提案書の全体構成については、業務改善提案書の書き方【構成と通し方を完全解説】で解説している。この記事では「対象の範囲」に絞って説明する。

この記事の3つのポイント
  • 「対象の範囲」には「①対象の部門と役割」「②業務の全体概要」「③使用するシステム・情報」「④対象外」の4要素を書く
  • 「対象外」を明示することで、上司からの指摘を「今回の改善に含めるか、別プロジェクトで扱うか」に仕分けられるようになる
  • この欄の目的は決裁者の投資判断ではなく、部門長との方針合意——目的を正しく理解するだけで書くべき内容が決まる

業務改善提案書「対象の範囲」に書く4つの要素

対象の範囲に書く4つの要素:部門名だけのNGパターンと4要素のOKパターンの比較図

まず前提を整理しておく。

「対象の範囲」は、決裁者(経営層)に投資を判断させるための欄ではない。部門長と方針を合意するための欄である。

部門長が「自分が責任を持って推進できる範囲か」を確認できることが、この欄の目的だ。

そのためには、次の4つの情報が揃っている必要がある。

  1. 誰が対象か(部門と役割)
  2. 何をしているか(業務の全体概要)
  3. 何を使っているか(システム・情報)
  4. 何は含まないか(対象外)

よくある「部門名だけ書いた提案書」と「4要素を書いた提案書」を比べると、この違いは明確になる。

項目NG(部門名だけ)OK(4要素)
部門と役割メンテナンス部門メンテナンス部門のうち、フィールドエンジニアとメンテナンスサポートの2役割
業務の概要(記載なし)現地対応→エスカレーション→回答→記録の4ステップ概要
システム・情報(記載なし)顧客DB・商品DB・技術DB・メール/チャット
対象外(記載なし)開発部門・営業部門およびそれらが受けるエスカレーション対応

「NGのほうが自分の書き方に近い」と思ったなら、次のステップで書き方を確認してほしい。

業務改善提案書「対象の範囲」の書き方:4ステップ

業務改善提案書「対象の範囲」の書き方4ステップのフロー図

Step 1:対象の部門と役割を書く

部門名だけでは不十分な理由は、1つの部門が複数の業務を担っているからだ。

「メンテナンス部門」と書いても、その中に「フィールドエンジニア」と「メンテナンスサポート」という2つの役割があれば、どちらが今回の改善対象なのかが読む人によって変わってしまう。「自分たちは関係ない」「自分たちも含まれる」という認識のズレは、レビューの場で表面化する。

書き方は「部門名:役割名(その役割の一言説明)」の形式が最もシンプルで伝わりやすい。

■ メンテナンス部門
  - フィールドエンジニア:お客様の工場現場で設備をメンテナンスする
  - メンテナンスサポート:フィールドエンジニアが対応方法がわからない場合に、
    問い合わせを受けて対応方法を回答する

役割の説明は、業務の詳細を書く必要はない。「誰に何をする人か」を一文で書くだけで足りる。

自分の部門であれば「○○部 ××課」と置き換えて書けば、そのまま使える形式だ。

Step 2:業務の全体概要を書く

「業務の詳細は別ページの現状の業務フローに書く」ため、このページで書くのは全体概要だけでよい。

読んだ人が「ざっくりこういう流れなのか」と把握できる粒度が目安だ。矢印(→)でつなぐ形式が最も読みやすい。各ステップは「誰が何をする」の一文で書き、補足事項は括弧書きで追記する。

フィールドエンジニアが現地対応
→ 対応方法がわからない場合、フィールドエンジニアからメンテナンスサポートにエスカレーション
  ※現状は開発部門・営業部門に直接問い合わせるケースも発生している
→ メンテナンスサポートが対応方法を調査し、フィールドエンジニアに回答
→ フィールドエンジニアが現地対応を実施
→ 対応終了後、フィールドエンジニアが対応内容を記録

矢印でつなぐだけなので、書くハードルは低い。5〜7行で全体像が伝わる形を目指せばよい。

Step 3:使用するシステム・情報を書く

「システム・情報」の欄には、対象の役割が業務の中で実際に使うものを書く。

デジタルのシステムに限らず、製造現場であれば工具や設備が中心になる場合もある。「今回の改善でどこを変えるか」の検討対象になるものを選んで書けばよい。

- 顧客データベース:顧客情報、設備の設定情報、運用情報
- 商品データベース:商品の仕様書、メンテナンス手順書
- 技術データベース:現地対応のノウハウ
- メール・チャット:エスカレーション履歴

書き方は「システム・情報名:その内容(何のデータが入っているか、何に使うか)」の形式で一覧化する。ITシステムだけでなく、紙の帳票や工具が重要な業務であれば、そちらを書いてかまわない。

Step 4:対象外を書く

「対象外」を書くことが、この4ステップの中で最も効果が大きい。

対象外を書く最大の目的は、部門長との合意の境界線を引くことだ。

業務上は関連があっても、部門長の管理外にある組織・業務は対象外として明記する。これを書かないと、レビュー時に「あの部署はどうするのか」という指摘が際限なく続く。

対象外に書くのは「業務上は関係するが、今回の改善では取り上げない組織・業務」である。

- 開発部門・営業部門(部門長の管理外のため)
- 開発部門・営業部門がメンテナンスサポートからエスカレーションを受けて対応する業務

「対象外:理由」の形式で1〜3行書くだけで、レビューの議論が格段に整理される。

業務改善提案書「対象の範囲」のよくあるつまずきと回避策

対象の範囲でよくある3つのつまずきポイントを示す警告チェックリスト図

4つのステップを理解した上で、実務で起きやすい3つのつまずきポイントを整理しておく。

つまずき1:部門名だけ書いて役割を書かない

「メンテナンス部門全体が対象なのか」「一部の担当者だけなのか」が不明になり、部門長から「うちの部門全員の話をするのか」と聞かれる。

回避策はシンプルだ。Step 1で示した「部門名:役割名(一言説明)」の形式で、役割まで必ず書く。

つまずき2:業務の全体概要を省く

部門長が「この改善はどのくらいの業務に影響するのか」をイメージできず、「もう少し詳しく説明してほしい」という返答が来る。提案書の読み合わせが長くなる原因になる。

「現状の業務フロー」は別ページに詳細を書くが、「対象の範囲」には矢印形式の全体概要を必ず入れる。5〜7行程度で足りる。

つまずき3:対象外を書かない

「では開発部門の対応はどうなるのか」「営業からのエスカレーションも変えるのか」という指摘が出るたびに、その場で都度判断することになる。合意の根拠が提案書に残らない。

「業務上関係するが、今回は扱わない」ものを「対象外」として1〜3行書くだけで解決する。上司からの指摘が「今回の改善に取り込む話か、別のプロジェクトで扱う話か」を仕分ける判断軸にもなる。

まとめと次のステップ

「対象の範囲」に4つの要素を書き終えた時点で、提案書全体の「誰に・何を・どこまで・何は含まない」が一枚に収まった状態になる。部門長との合意の土台ができた、ということだ。

工場設備会社のメンテナンス部門での支援を経て、「対象の範囲」を正しく書いた提案書に対する部門長レビューは明らかに変わった。「この範囲で進めよう」「この指摘は別の機会に取り上げよう」という会話が成立するようになり、提案書が議論の地図として機能し始めた。

次に書くべきは「目的」または「現状の業務フロー」だ。「目的」は「対象の範囲」で定めた業務に対して何を達成したいかを書く欄。「現状の業務フロー」はStep 2で概要を示した業務を詳細化した欄である。

「目的」の書き方については、業務改善提案書「目的」の書き方|中期経営計画と連動させる実践ガイドで解説している。

提案書全体の構成については、業務改善提案書の書き方【構成と通し方を完全解説】を参照してほしい。